遅くなりましたが、2011年度林業とアートの作品を紹介します。
今年度の林業とアートでは河和田の里山に計5作品を制作しました。
地域の方々のアイデアを形に、お手伝いしながら共に制作した「植物のカーテン」と「ウッドデッキ」
豪雪の被害を受けた昨年度の作品を回収し、里山への還元を目指した「林道マルチング」
そして、メインの一本の木からプロジェクトでは計2作品、里山から切り出した一本の杉からできる空間の可能性を探りました。
今回はメインとなった「一本の木から」プロジェクトで制作した2作品を、1作品ずつ展示したキャプションと共に“写真多め”で紹介したいと思います。
まずは1作品目。
杉一本から作る空間。
主に建材利用を目的として多くの山を切り開き、里山を量産し続けてきた日本。
しかしながら、近年の安価な海外木材の輸入などにより需要の減った本国産の木材の価格は伐採・運搬・加工コストなどの高沸もあり、伐採できず製材されない杉が多く残されているなどの問題を多く抱えています。
そうした中で、減少し続ける国産杉材の空間を保持する方法を考えました。
建材や家具の材として人々の生活空間と密接し常に私達の生活を豊かにしてきた杉材。
林業とアートでは、例えば杉一本を購入し、一本単位で完結させる事のできる空間に可能性を見出す事ができれば、国産材で作られる空間を保持していく手段の一つとして提案する事はできないかと考えます。
私達は河和田の里山から杉を切出し、製材し杉一本から作られる空間の可能性を探りました。
1.切出し
一作品目は雪の重みにより途中で曲がってしまった杉を切出しました。
この時点でチェーンソーにより2200mmの丸太に切断し製材所へ
2.製材
曲がっている部分の丸太と細く材の出せない丸太を除き、45mm角の角材と20mm×100mmの板材に加工。
杉皮のついたままの外側の端材も全て回収
キャプションには含まなかったのですが、ここで
“設計”
が入ります。
今回はどれくらいの材が一本から取れるのかが見当がつかなかったので、製材後設計するという手法を取りました。
3.運搬
2作品分の材を軽トラックで運搬
美しく収まります
4.加工
ここからは全て手作業。
ノコとノミで加工
5.組立
この作品は人が乗るため、強度重視でビス止め。
ビスは木ダボで見えないように処理
仕上げは荒めに、材一本一本の個性を残しました。
6.設置
敷地は間伐されず、下草が生い茂る里山。
この杉一本からこの空間は出来上がります。
下に敷かれているのは竹チップ
“杉のカタチをした小さなお家の提案。
例えば、家主は座面と同じ高さに設定されたテーブルに客を招きお茶をふるまい、談笑する。
一本の杉からできた小さな杉の空間は、訪れた人々に多くの質感と香りの時間を与えてくれる”
家主は床下から中へ
一本の杉から切り出した材達は様々な木目で私達を楽しませてくれます。
美しく垂直に延びる杉達
河和田周辺の山も、すごく小さな間隔で土地の所有者が違います。
相続していく内に曖昧になっている山の土地感と、里山から離れる生活。整備するにもコストもかかり増える放置林。
例えば、このように里山の所有者が自分の山を間伐し、日曜大工で間伐した一本の杉から空間を作って週末友人を招くという生活を創る事ができれば、もしかすると里山も人々の暮らしも豊かになるのかもしれません。
私達はこのお家で小さなカフェを開きました。
店長は林業とアート3年目の冬子
この里山で採れた野草を飾ったテーブルで、コーヒーとお菓子を楽しみます。
端材で作ったコースターに葉っぱのお皿
目線の差が、訪れた人々に家主の向こう側の美しい杉達を魅せてくれます。
ランプに明かりが灯る。
杉の生い茂った里山は、日が傾くとすぐに暗くなります。
車道から見上げる。
真っ暗になるとバーのよう
河和田杉の無垢材から出来上がった椅子は柔らかく、何時間でも居座れる空間。
実はこちらの作品、本来一本分全て使い切るのが目的ですが、台風の影響で制作時間が取れなかったため、続きを制作できず材を余らせている状態。
現在は元養鶏所の“みさき”にて保存させていただいています。
時間の都合上、木材の乾燥をおこなっていないため来年どういった状態になっているかわかりませんが、状態が良ければまた、何かに使用したいと思っていますので是非見に来てください。
おまけ:
横から見るとこのように中の人の足がぴょこっと出ていてカワイイです。
林業とアート/アース
私は、大分県在住の者ですが、大分も県産材の杉をもてあましている状態のようです。
実際、杉1本の切り出しから製材までにどのくらいの価格で出来たのか興味があります。
差支えなければ、教えていただけませんか。
突然の質問で済みません。
私も建築設計をしているものとして、国産の木材需要の拡大に何か役に立ちたいと思っています。